Volume.37 SPECIAL CONTENTS

家時間がもっと好きになるインテリアの楽しみ方

MO’ HOME SWEET HOME

いま、住まいの「快適さ」が
変わりつつあります。
在宅ワークなどで家での
タスクが増える一方、
家の中をもっと居心地よくして
上手にオン/オフを切り替えたいなど、
これまでとは違った空間づくりのヒントを
探している人も多いはず。
では家時間を快適にするにはどうしたら? 
心地よい暮らし提案で
人気のセレクトショップ
pace aroundの
山岸さんご夫妻に、
家時間を楽しむためのアイデアや
快適に暮らすヒントを教えてもらいます。

家時間がもっと好きになるインテリアの楽しみ方

自身の感性と
ラフさを大切にして
リラックス感ある空間づくり

軽井沢にほど近い森の中、葉を茂らせた木々の緑に隠れるようにpace aroundは立っています。青い木の扉を開けると、大きな窓から森の風景と朝陽を取り込んだ明るい土間スペースが、その奥には印刷工場をリノベーションしたという天井の高い開放的な空間が広がります。
何度来ても新鮮な発見があるようディスプレイを定期的に変えているという店内は、暮らし周りのモノがシーンごとに美しくコーディネートされ、気になるものを見つけるたびに足が止まります。

pace around

オーナー

山岸正明さん・
良子さんご夫妻

インテリアと日常雑貨のセレクトショップpace aroundオーナー。ともに長野県出身。正明さんは大学卒業後、都内のインテリアブランドに入社。帰郷して北欧ヴィンテージのインテリアショップに勤めた後、2013年pace aroundをオープン。良子さんは主にコーディネートやドライフラワーを担当している。人とモノが交錯するヨーロッパの街並みをイメージしたという店内は、国内外から買い付けたセンスのいい家具や雑貨、食器、書籍などが並び、ワインやパン、コーヒーも楽しめる。pace around(歩きまわる)という名のとおり、ゆっくりと散策しながら瑞々しい感性に出会えるステキな空間だ。

どれも素敵すぎて迷ってしまいますが、そもそもインテリアは何を基準に選ぶといいのでしょう。

 

山岸さん:私たちがモノ選びで意識しているのは、自身の感性や好みを大切にすることです。いいなと思える空間や好きと感じるテイストは何か。何にときめいて、どんな色に反応するかなど、まずは自分の嗜好を知ることが大事かなと思います。それにはいろいろなお店を見て回ったり、雑誌でイメージを膨らませたりするのもいいですね。これを繰り返していくうちに、そばに置きたい、買いたいと思えるものが自ずと明確になっていくはずです。また家づくりを考えている方なら、たとえば好みの家具を選んでから、それに合わせて床や壁を決めるというやり方があってもいいと思います。

住まいをリラックスした心地いい空間にするためには、どんなことを意識するといいでしょう。

 

山岸さん:まずは季節感を取り入れてみては? 折々の草花や庭木の枝葉を飾るだけでも空間が生き生きします。
2つ目は色を使いすぎないことです。好きな色の中から2〜3色に絞ると統一感が出て落ち着きのある空間になります。
3つ目は「飾りすぎない」こと。やりすぎると空間に力みが出て息苦しい雰囲気になってしまいます。そうならないよう、私たちは「ラフ」さを常に意識しています。
リラックスした空間にするには、実用性のないモノを取り入れるのもいいですね。実用的なものは機能性や用途が求められるため、固い雰囲気になりがちです。でもたとえばオブジェのように実用性のないものは、そうした固さを「崩して」くれるんです。

一見、ムダに見えるモノも、心地いい空間づくりには必要なんですね。

 

山岸さん:同様に、曲がったりキズがついたようなヴィンテージアイテムにも、空気を和らげる働きがあります。取り入れるときはポイントで使うようにしましょう。 ヴィンテージは服でいえば古着。全身古着で揃えてしまうと野暮ったくなりますよね。ポイントとして取り入れることでヴィンテージの魅力が引き立ちます。
またインテリアの好みは歳を重ねるごとに変わるものなので、一度に全部揃えようとせず、時間をかけて好きなものを楽しみながら集めるのがいいかなと思います。
このほか五感に訴えかける音や香り、照明も大切な要素です。たとえばキャンドルの灯り。家の隅まで電気でライトアップするのではなく、時にはスイッチを切ってキャンドルを灯すのもステキですよ。日常の中でも、少し暗い場所があった方が心が休まりますし、オンとオフの切り替えもしやすいでしょう。昼と夜で部屋の香りや流す音楽を分けるのもリラックス度を高めてくれると思います。
そうした落ち着ける場所を意識的につくることが、これからの時代には必要なのかもしれませんね。

山岸さんに聞く
家時間を楽しむ方法

POINT 1
高低差をつけて
変化をもたせる

豊かな暮らしは食卓から。でもお皿やグラスを並べるだけでは平坦な印象になってしまいます。そんな時は、お誕生日などに活躍する高脚のケーキスタンドを取り入れてみてはいかがでしょう。「高低差」をつけるだけで各々のアイテムが引き立てあい、食卓にリズムと広がりが生まれます。高さが出せれば鍋敷きなどでも代用できます。ケーキスタンドは特別な日だけのものではありません。積極的に活用すれば、普段の食卓がより豊かになると思います。

POINT 2
大きなセンターテーブルより
小さなサイドテーブルを2つ

ソファとセットで揃えてしまいがちなリビングのセンターテーブル。コーヒーカップに手をのばす時など、背もたれから体を起こすのがちょっとしたストレスになっていませんか? センターテーブルは部屋を整えるインテリアとしては大切ですが、機能性はさほど高くありません。そこでおすすめしたいのがサイドテーブルです。コンパクトなので邪魔にならず移動もラク。高さやカタチの違うものを組み合わせれば、シーンに合わせて形や角度を自由に変えられます。体の脇に置けるので、これならリラックスした体勢のままコーヒーカップに手が届きますよね。またコーナーソファのようなセパレートタイプは、ソファとソファの間にサイドテーブルを置くと使い勝手が格段によくなります。ぜひ試してみてください。

POINT 3
ファブリックの色と素材で
変化をつける

季節感を取り入れるのは、暮らしを愉しむ第一歩です。替えのききにくいソファやテーブルなどの家具には、ブランケットやクッション、ラグ、テーブルクロスなどで変化をつけましょう。春夏はサラリとした感触のリネンやコットン、秋冬は見た目にも温かなシープスキンやウールなど、季節に合わせて素材や色をシフト。ソファにファブリックをフワリと掛けるだけでもくつろぎ感がアップしますし、小さな面積であれば普段使わない派手な色で遊んでみるのも楽しいですよ。

POINT 4
ダイニングテーブルを
マルチに活用する

仕事専用のワークスペースを設けるのが難しければ、ダイニングテーブルを活用しましょう。仕事中に座るなら、人間工学に基づいてデザインされたVARIABLEチェアがいいでしょう。座るだけで正しい姿勢が保てる設計なので、長時間座っても疲れにくく、集中力が高まって仕事が捗ります。デスクランプやフロアスタンドをそばに置いて、作業に必要な光量を確保するのも忘れずに。

POINT 5
小さくても機能的な
ワークスペースのつくり方

在宅ワークが増えたからといって、大きなデスクを構えるのは抵抗があるし、専用スペースを割くゆとりもない……。そんな方におすすめなのが、奥行きの浅いコンパクトなデスクをワークテーブルとして使う方法です。収納不足はワゴンやオープンラックで補いましょう。作業台や配膳台にもなるワゴンは汎用性が高いので、必要なアイテムをまとめておけば、仕事をしたい場所にそれごと移動できて作業効率も上がります。

POINT 6
お気に入りのアイテムを
バランスよく飾る

本棚や食器棚をセンスよく飾るのは意外に難しいもの。つい詰め込みすぎたり、なんとなくバランスが悪かったり。ショップでは「三角形」を意識した配置を心がけています。飾りたいアイテムが2つの場合は、高さを変えるとバランスが取りやすくなります。使う色は2〜3色くらいに絞りましょう。その代わり、ガラスや木、陶器、石、鉄のように異なる素材を重ねていくと、同じ色でも奥行きや深みが出て全体がまとまりやすくなります。

POINT 7
美しく収納する

収納でお悩みの方は少なくありません。たとえばオープンラックは飾り棚としても使える優れたアイテムの一つ。本や雑貨をそのまま並べるのはもちろんですが、ところどころに木箱やカゴなどを組み込めば、スッキリと見せることができて収納力もアップ。ヴィンテージの木箱などを使えば味わいも出せます。本や雑誌は横に倒して積み上げることで、収納しながらオブジェのような雰囲気に。また、テーブルや床の上に木箱を積み上げて高さを出すのも、収納しながら空間を素敵に見せる一つの方法です。

POINT 8
自分だけの
パーソナルチェアをもつ

ダイニングやソファ、デスク以外にも座れる場所を増やすと、家での時間がもっと快適になります。その際に取り入れたいのがゆったり座れるパーソナルチェアです。動かしやすいタイプのものなら、空いている場所にそっと置くだけで自分だけの「居場所」がつくれます。テラスに出せば日光浴や昼寝などちょっとした気分転換に、本棚とフロアスタンドを添えれば自分だけのライブラリーに、などさまざまなシーンで活躍します。

POINT 9
シーンに合わせて
灯りを使い分ける

灯りは室内の居心地を左右する大事なアイテム。メイン照明の他に、どこへでも連れて行けるモバイル照明が一つあると便利です。テーブルランプとしてはもちろん、夜が更けたらそのままベッドサイドに持って行き、読書の灯りに。もちろん災害時の非常灯としても活躍します。一方、キャンドルの灯りは心と時間をリセットしてくれます。ゆらゆら揺らめく炎は、照明にはない癒しを与えてくれます。自然素材のミツロウと精油でつくったアロマキャンドルなら、ススが出にくくお部屋の空気も汚しません。ミツロウ独特の温かなオレンジ色の炎も魅力です。

POINT 10
植物やドライフラワーを
取り入れる

フレッシュな草花やドライフラワーも、季節感を表現してくれるアイテムの一つです。庭先に咲いた草花でも十分楽しめますので、気軽に取り入れてみましょう。さりげなく飾るなら器は広口タイプではなく、口のすぼまったものがおすすめです。植物を自立させたい時、広口の器ではかなりのボリュームが必要です。口の狭い器なら一輪の花でも、スッと挿し入れるだけで美しくサマになります。

取材時はドライフラワーのワークスペースを増築していた pace aroundさん。小諸市の蝋燭作家さんと地元のミツロウを使ったオリジナルのフレグランスキャンドルも試作中でした。進化し続けるショップから今後も目が離せません。